睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群(SAHS:Sleep Apnea-Hypopnea Syndrome)は、睡眠中に呼吸が繰り返し途切れる病気です。
これにより、患者さんは十分な睡眠を取れず、日常生活にさまざまな影響が生じます。

自覚症状

睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に起こるため自覚症状が乏しい傾向にあります。

  1. 睡眠中の息苦しさ
    無呼吸発作が起こると、一時的に酸素供給が減少し、息苦しさを感じます。これが原因で繰り返し目覚めることがあります。
  2. 睡眠中の頻繁な目覚め
    無呼吸発作のために繰り返し目覚めることで、睡眠の質が低下し、疲れが取れない状態になります。
  3. 朝の頭痛
    睡眠中の酸素供給不足が原因で、朝に頭痛を感じることがあります。
  4. 昼間の過度な眠気
    睡眠の質が低下することで、昼間に過度な眠気を感じることがあります。これが原因で仕事や運転中の注意力低下が生じることがあります。
  5. 無気力感
    睡眠不足や酸素供給不足によって、無気力感が生じることがあります。これが長期化すると、抑うつ症状が現れることがあります。
  6. 集中力低下
    睡眠不足は集中力の低下を招きます。仕事や勉強、運転中に注意力が散漫になることがあります。
  7. 性格の変化(イライラしやすい、抑うつ症状)
    睡眠不足や無気力感が原因で、イライラしやすくなったり、抑うつ症状が現れることがあります。

症状は寝ているときでもあり本人が気が付きにくいため、他人が無呼吸症候群の症状に気付くこともあります。
その場合次のような症状があるときは要注意が必要です。

  1. 無呼吸(呼吸が10秒以上止まる)
    無呼吸発作が繰り返し起こることが、この症候群の特徴です。無呼吸の回数や程度によって症状が異なります。
  2. いびき
    睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、いびきをかくことが多いです。いびきが大きい場合は、家族やパートナーにも影響を与えることがあります。
  3. 突然の息切れやゼーゼーとした呼吸音
    無呼吸発作が終わると、急激に息を吸い込むため、突然の息切れやゼーゼーとした呼吸音が聞こえることがあります。
  4. 寝言や寝相の悪さ
    睡眠の質が低下することで、寝言が多くなったり、寝相が悪くなることがあります。

検査

睡眠時無呼吸症候群の診断には、以下の検査が行われます。

  1. 問診
    最初に、医師が患者の症状病歴生活習慣家族歴などについて聞き取ります。これにより、睡眠時無呼吸症候群の疑いや重症度、他の疾患との関連性を把握することができます。
  2. 身体検査診察
    口腔内鼻腔喉の構造を調べます。肥満顎の短さ喉の狭窄など、無呼吸の原因となる要因を特定するために重要です。
  3. 睡眠検査
    睡眠検査は、睡眠時無呼吸症候群の診断に最も重要な検査方法です。睡眠中の呼吸心電図酸素飽和度などを記録し、無呼吸の回数や程度を詳しく調べます。主に以下の2種類の睡眠検査があります。

ポリソムノグラフィ(PSG) PSGは、病院や睡眠クリニックで行われる包括的な睡眠検査です。こちらには簡易PSG精密PSGがあります。

簡易PSG

自宅で行う簡易的な睡眠検査です。専用の機器を借りて、心電図、酸素飽和度、呼吸の流れ、体位などを測定します。自宅で検査ができるため、患者の負担が少ないですが、PSGほど詳細なデータは得られません。

精密PSG

患者は一晩病院で過ごし、脳波、心電図、筋電図、酸素飽和度、眼球運動、足の動き、呼吸などを同時に測定します。これにより、無呼吸の回数や程度、睡眠の質を詳細に分析できます。一般的には入院にて検査することが多いですが当院ではこちらも自宅で簡単に行っていただくことができます。

これらの検査結果をもとに、睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度の判定を行います。

治療

睡眠時無呼吸症候群の治療法は大きく分けて以下の通りです。

生活習慣の改善

  • ダイエット
    肥満が無呼吸の原因となることがあるため、適切な体重管理が重要です。  
  • 禁煙
    喫煙は気道の炎症や狭窄を引き起こし、無呼吸を悪化させることがあります。  
  • 節酒
    アルコールは筋肉を弛緩させ、気道の閉塞を促すため、適度な飲酒が大切です。  
  • 睡眠環境の整備
    寝具の改善や寝室の温度・湿度調整、適切なの使用が重要です。

呼吸補助器具

  • CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)
    睡眠中にマスクを着用し、一定の気圧を保って気道を開放する治療法です。
    最も一般的で効果的な治療法とされており無呼吸改善の論文も多数あります。
  • マウスピース
    下顎を前方に引っ張り、気道を広げることで無呼吸を改善する装置。寝る前に装着し、症状の軽減を図ります。

薬物療法

こちらは補助的に使用されることがありますが、薬物療法のみで
無呼吸症候群を改善するのは難しいと考えられています。

鼻づまりを改善することで、無呼吸の症状が軽減されることがあるため抗ヒスタミン薬は
使用されることがあります。

手術治療

  • 扁桃腺やアデノイドの摘出
    気道を圧迫する扁桃腺アデノイドを取り除くことで、無呼吸が改善されることがあります。
  • 顎の矯正
    顎の形や位置が無呼吸の原因となる場合、矯正手術を行うことで症状が改善されることがあります。
  • 上気道・下気道の手術
    鼻中隔湾曲症や喉の狭窄を改善する手術が行われることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を受けることで改善が期待できます。

しかし、睡眠時無呼吸症候群を放置して適切な治療を受けないと、
高血圧心疾患糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることがあります。

家族やパートナーも、無呼吸症状やいびきに気付いた場合は、適切なサポートを行い、
受診を促すことが大切です。
睡眠時無呼吸症候群は、患者さんだけでなく、周囲の人たちと協力して対処することが求められます。

少しでも症状に思い当たるところがあるようなら、早めに医療機関を受診しましょう。

当院では呼吸器専門医呼吸療法士の看護師も在籍しており、こまめなフォローが可能です。またCPAPのオンライン診療もしているため、クリニックを受診する頻度が極端に減らせるのもメリットがあります。